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【書評】石油を読む―地政学的発想を超えて

書籍の概要

地政学的な分析もしながら、出版された2005年当時の原油価格高騰の原因や、天然ガスも含むエネルギーなどについて扱っています。

乱高下する原油価格。その原因はどこにあるのか?
2005年以降を中心に、各国の対応からその答えを探る。東西にわたって原油を政治の武器にしたいロシア、積極的に資源外交を展開する中国などの動きが注目。枯渇神話、OPEC神話、メジャー神話など、石油を巡る誤った認識を指摘し、国際石油市場の実態に迫る。

気になったところをメモ

石油は常温常圧下で比重が水に近い液体であるために、輸送コストは非常に安い。特に、30万トン以上という大型タンカーで輸送する場合、地球を半周しても現在の原油価格の5%以下(1バレル=159リットル=1ドル程度)の輸送費しかかからず、しかも膨大な数の大型石油タンカーが世界に存在している。(p107)

今のように価格が低迷していても原油価格の3%(1ドルの輸送費/1バレルあたり30ドル)程度の輸送費しかかからないようです。アメリカのシェールが輸出されるようになると世界的にもっと供給過剰になりますね。

原油と違って天然ガスは輸送費が高いようです。

WTI原油の実際の生産量は、日本の消費量の1割にもならない、1日あたり50万バレル程度だが、先物取引では世界の消費量を大きく超える1日あたり1億バレル以上の取引量にもなる。(p115)

WTIの生産量ってこんなに少なかったんですね。

その代わり先物の取引量はすさまじいです。

国際石油市場というのは、探査・開発・生産を行う上流事業も、タンカー輸送・精製・製品販売を行う下流事業も巨額投資による巨大な装置の蓄積によって構成されている。生産能力の増強のためには、事業開始当初に巨額の資金が必要であり、工事期間も長い。しかも、投資資金は様々な形で外部から借り受けることとなる。一旦設備が完成すれば、日々の操業費は安い。

したがって、価格が下落しても、生産を減少させるインセンティブは働きにくく、逆に価格が上昇しても、新規投資を行って生産を増加させるには時間がかかかる。

その後、低価格化によって需要がようやく増大し、供給力が不足した時点で、短期需要の価格弾力性が低いために今度は価格が急騰し、再び投資がなされて生産能力が増加するまで高価格が続き、そして、再び暴落するというサイクルをたどる傾向があるとされている。(p117-118) 

供給側からすると、投資から供給増までに時間がかかりますが、 需要側からすると、必需品のような扱いなので、価格の推移が急激ですね。

価格が低下する場合、供給側は生産を減少させてもメリットがあまりないので生産量はすぐに減るわけではなく、需要側もすぐ需要が大きくなるわけではないので価格低下の速度が大きくなります。

逆に価格が高騰する場合でも、供給側はすぐに生産量を増加できないのに対し、需要側は必需品のような扱いなのでいくら出しても買おうとしてしまいます。結果的に価格高騰の速度が大きくなります。

なので、価格高騰の時期と価格低下の時期がそれぞれ急激に入れ替わりながら、ある程度長く続くというサイクルになっていそうです。

ここ35年の価格推移は以下のようになっています。

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原油価格の推移 - 世界経済のネタ帳より

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