なぜシェールオイルは減産しないのか?
シェールオイルの生産量
サウジアラビアなどはシェールを潰すという強い意志があるから減産しないようですが、アメリカのシェール企業は減産もしくは倒産しないのでしょうか?
こちらの記事によると、稼働リグ数はピーク時の25%になっていますが、生産量はピーク時の960万バレル/日から50万バレル/日しか減らずに、まだ910万バレル/日もあるそうです。
新規投資抑制で、原油掘削に使用する設備リグの稼働数は2月19日時点で413基とピーク時の約4分の1まで激減。ところが、足元の米原油生産は日量約910万バレルで、直近の最高だった15年6月から約50万バレル減っただけだ。15年9月時点の米エネルギー情報局(EIA)は16年1~3月期には日量884万バレルに減ると予測したが、節目の900万バレルをなかなか割り込まない。米原油の約半分とされるシェールの生産が高水準なためだ。
シェールオイルが減産しない理由
こちらの記事によると、減産しない理由はヘッジを行ってその分で最終的な価格をキープしているからということでした。つまり、過去に高い価格でヘッジを行った分を使いながら、サウジアラビアなどの産油国とがまんくらべをしているわけですね。
用意したヘッジには上限があるので、サウジアラビアよりはシェール企業が先に倒れる可能性は高そうです。
現在のような30ドル台の価格でも事業を継続出来る秘密は、今回の価格大暴落が始まった2014年12月から指摘しているように、先物市場を使ってヘッジしているからだ。
念のためにと思って、デボン・エナジーの決算発表資料を読んでみた。2015年実現価格は米国原油44.01ドル/バレル、カナダ原油が25.14で、加重平均すると36.39となる。一方で、ヘッジ収入が20.72あるので、最終実現価格は57.11ドル/バレルとなる、というわけだ。それでも年間最終損益は145億ドルの赤字だった。
デボンエナジーなどの決算
デボンエナジー(DVN)はシェールオイルのパイオニア的な企業で、2016/2/27に2015Q4の決算を発表しています。
上の記事で書いてある通りですが、「Year Ended December 31, 2015」では、ヘッジ前価格が$36.39、ヘッジ収入が$20.72、最終価格が$57.11となっているのがわかります。
また「Quarter Ended December 31, 2015」では、ヘッジ前価格が$29.31、ヘッジ収入が$24.36、最終価格が$53.67となっていて、2015年末でもまだヘッジがだいぶ残っていることがわかります。
また、ヘッジによってcore earningsも黒字なので、すぐに困るということはなさそうです。
Devon Energy Corp. (NYSE: DVN) today announced core earnings of $319 million, or $0.77 per diluted share, for the fourth quarter of 2015.
また、EOGは原油についてはヘッジをしていないなど、企業によって違いがあるようです。EOGの2015Q4決算は-$284Mの赤字でしたが、手元流動性はまだ$2.7Bあります。
Hedging Activity
For the period March 1 through August 31, 2016, EOG has natural gas financial price swap contracts in place for 60,000 million British thermal units (MMBtu) per day at a weighted average price of $2.49 per MMBtu. EOG has no crude oil financial price contracts in place. A comprehensive summary of natural gas derivative contracts is provided in the attached tables.http://investors.eogresources.com/download/4Q15+Earnings+Press+Release+w+Tables.pdf
まとめ
ヘッジの量や価格は各社によって違いはありますが、まだシェールオイル大手の倒産という話は聞きません。
一つの企業が減産しても全体の価格には影響がなく、自社のキャッシュフローが少なくなって倒産するだけなので、ヘッジしたり、投資を減らしたり、効率の良いリグに集中したりして生き残りをかけているのでしょう。
原油価格の低迷はしばらく続きそうですし、先にベネズエラなどの体力のない国から危機に陥っていっていますね。