【書評】スターバックス成功物語
はじめに
著者のハワード・シュルツはスターバックス(SBUX)の創業者で、1987年から2000年までスターバックスのCEOでした。その後、後継者にCEOを譲ったのですが、事業がうまくいかなくなり、2008年に再度CEOに復帰します。
創業から1997年までの話が「スターバックス成功物語」で、2008年からの話が「スターバックス再生物語」です。株価を見ても2006年あたりにいったんピークを迎え($18)、リーマンショックの影響もあり2008年に落ち込み($5)、復活して現在に至ります($60)。
引用と感想
スターバックスの創業から1997年までが描かれています。それは、ハワード・シュルツが創業したイル・ジョルナーレが、コーヒー豆を売る小さな店だったスターバックスを吸収合併し、数千店舗に拡大するまでのスターバックスの軌跡です。
中小企業から大企業へ移り変わる中で、人材、資金調達、商品開発、店舗展開などのあらゆることが語られています。仕事をしている人にはどれもとても参考になる話だと思います。
事業計画書などは単なる紙切れにすぎない。いかに見事な事業計画でも、社員がそれを受け入れてくれなければ何の価値もないのだ。社員が経営者と同じ気持ちになり、心底やり遂げようと決意しなければ、事業を継続することはおろか、軌道に乗せることすらおぼつかない。そして社員は、経営者の判断が信頼でき、なおかつ自分たちの努力が認められ、正当に評価されるのだと実感した時、初めて計画を受け入れるのだ。(P133)
イル・ジョルナーレがスターバックスを吸収合併した時、スターバックスの社員の士気はとても低下していました。社員との信頼関係と会社としてのビジョンが崩れていたので、それを立てなおすところから始まります。
最初は、コーヒーこそがその答えだと単純に考えていた。しかし、そのうちに、我々の店には独特の雰囲気があり、それがコーヒー自体に劣らぬ魅力的な効果を発揮していることがわかってきた。
・ロマンチックな味わい
・手の届く贅沢
・オアシス
・普段着の交流人間は、形式ばらない社交の場に集い、仕事や家庭の問題を忘れ、くつろいだ雰囲気で話をしたいという欲求を持っている。
(P156)
スターバックスはよくサードプレイス(第三の場所)と呼ばれます。自宅でも職場でもない三つめの場所という意味です。 友達と話しながらコーヒーを飲むのもいいし、ノートパソコンでネットサーフィンするのもいい。そういったくつろげる第三の場所の提供というのがひとつの価値になっています。
企業が倒産したり伸び悩むのは、ほとんどの場合、必要な人材、システム、手順への投資を怠るためである。ほとんどの経営者は、この投資に必要な金額を過小評価してしまう。(P193)
永続性のある卓越したブランドを築くための第一の要件は、魅力的な製品を持つことだ。これに代わるものはない。
スターバックスの場合、製品は単なるコーヒー以上の意味を持っている。顧客がスターバックスを訪れる理由は、コーヒー、社員、店での体験の三つなのである。(P340)
「スターバックス再生物語」では、スターバックスがこれらの問題に直面してしまいます。ITとサプライチェーンへの投資を怠ってしまい、コーヒーの品質が下がり、店での体験としても重要な部分が抜け落ちてしまいます。この本を書いた時には、まさかそうなるとは思っていなかったんでしょうね。
いったんは大きな成功を収めた「スターバックス成功物語」、それから事業がうまくいかなくなって再度立て直した「スターバックス再生物語」。この2冊の本はセットで読むのがおすすめです。
書籍へのリンク
- 作者: ハワードシュルツ,ドリー・ジョーンズヤング,Howard Schultz,Dori Jones Yang,小幡照雄,大川修二
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 1998/04/23
- メディア: 単行本
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【書評】スターバックス再生物語 つながりを育む経営 - Invest Shift
- 作者: ハワード・シュルツ,ジョアンヌ・ゴードン,月沢李歌子
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2011/04/19
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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