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iPodの製造で雇用されているのは?

はじめに

グローバル・スーパーリッチ」という本は、最も裕福な0.1%のプルトクラート(超富裕層)に焦点を合わせ、詳細なデータやインタビューなどからそのプルトクラートの実態を解明する内容になっています。

少し古いデータですが、面白い記述があったので紹介してみたいと思います。

iPhone製造で雇用されているのは誰だ?

最近、iPodの雇用への影響について調査が行われた。

彼らの発見の一つは、2006年の時点で、iPodに関連して雇用されていた労働者の数である。アメリカ国内では1万3920人だったのに対し、国外では2万7250人と、国内の2倍近くにのぼっていたという。 

iPodに関連する海外での雇用者のうち、中国での雇用者は1万2270人であり、全体の半数に満たない。一方、フィリピンでの雇用者は4750人にのぼる。

グローバル・スーパーリッチ」p48〜49

これは普通に想像できることかもしれません。中国での雇用者が半数以下と以外と少ないことくらいでしょうか。

さらに、驚くべき事実がある。まず、iPodに関連する雇用のほとんどはアメリカの外にあるが、iPodに関連する給与の大半はアメリカ国内にとどまる。アメリカ国内のアップル社の従業員1万3920人が稼ぐ金額は7億5000万ドル近くにのぼる。ところが、海外の従業員2万7250人が手にする金額は3億2000万ドルに満たない。

アメリカ国内におけるiPod関連の労働人口の構成をよく見れば、この格差はいっそう意義深いものになる。アメリカの雇用の半数以上(7789人)は小売と非専門職(事務補助、運送及び配送など)で占められる。こういう労働者は全体で2億2000万ドルを稼ぐ。

アップル社の革新によって最大の利益を得ているのは、アメリカに6101人いるエンジニアなどの専門職労働者で、彼らが手にする給与は全体で5億2500万ドルにのぼる。これはアメリカ国内の非専門職労働者全員の給与の2倍以上で、なんとアップル社の海外従業員全員分の給与よりも多い。これこそ賃金のいい「きれいな仕事」で、それ以外は「きつい仕事」というわけだ。

グローバル・スーパーリッチ」p48〜49

給与の大半がアメリカに留まるところはよいのですが、アメリカ国内でも強烈な格差があります。 アメリカ国内だけを見ても、一人当たりの収入格差は約2倍程度になっています。

国外との競争で雇用がなくなるという主張はよく聞きますが、iPodの場合は意外と国内の収入の差もかなり大きいようです。雇用数ではなく給与総額でみると、国内にかなり給与は留まっているのに、恩恵を受けている人はずいぶんと偏っています。

資本主義なので格差があることは当たり前なのですが、中流以下が不満を持つと、今回のイギリスのEU離脱や、アメリカだと大統領にトランプを選んでしまうというようなことが起きそうです。どう政府が税制で調整していけるかで国の運命が変わりそうですね。

元の論文へのリンク

Innovation and Job Creation in a Global Economy:The Case of Apple’s iPod

書籍へのリンク

グローバル・スーパーリッチ: 超格差の時代

グローバル・スーパーリッチ: 超格差の時代

 

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