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コラム:日銀緩和中毒が招いた財政規律の喪失

よいコラムだったのでご紹介。

コラム:日銀緩和中毒が招いた財政規律の喪失 より 

従来から筆者は、日本経済の中長期シナリオとして、次の4つを掲げてきた。1)デフレ回帰、2)4―5%の比較的モデレートなインフレ下での金融抑圧、3)10%程度の高インフレ下での金融抑圧、4)安倍政権が目標とする「2%潜在成長率・2%インフレ」の定着である。

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まずデフレ回帰シナリオについては、35%から20%に引き下げ、代わりに2番目のマイルドインフレと3番目の高インフレのシナリオについて、それぞれ40%から50%へ、20%から25%へ引き上げた。安倍政権が望む「ハッピーエンド」である4番目のシナリオは、5%のまま据え置いた。

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デフレ脱却にマネタイゼーション政策が有効であるなら、なぜ、安倍政権以前は採用しなかったのか。それは、強い常習性を持ち、必要な時に止められないから、財政当局や金融当局が発動を躊躇(ちゅうちょ)してきたためである。仮に初期の目的を達し、総需要刺激策を手仕舞いしようとしても、麻薬中毒患者が感じるが如く強い痛みが経済に走る。しかし、マネタイゼーションを継続すれば、中央銀行金利上昇圧力を吸収してくれるため、継続コストは全く感じられない。むしろ、つかの間のユーフォリアを感じることができる。

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3番目のシナリオでは、150円を超えるような劇的な円安によって、二桁インフレが進むことを想定しているが、円安が当初の想定よりも進むと考えているため、今回、生起確率を引き上げた。インフレ加速が始まっても、財政危機を回避するため、長期金利の上昇を抑え続けると、実質金利のマイナス幅が拡大し、円安がさらに加速、インフレが高進するスパイラルに陥る。そうした状況を回避するため、日銀は長期国債の大量購入を継続したまま、オーバーナイト金利を引き上げるオペレーション・ツイストを余儀なくされる可能性がある。

その場合、日銀当座預金に対する民間金融機関への付利の支払いが嵩(かさ)み、損失拡大によって、債務超過に陥る可能性が高い。理論上は中央銀行債務超過に陥っても、流動性供給などに支障はないのだが、3番目のシナリオでは、国債国債を裏付けとする日銀券に対する疑念が生じているからこそ、劇的な円安が進むのである。だとすると、日銀が債務超過になること自体が、さらなる円安圧力につながるのではないか、心配である。

今のところ、筆者が3番目を基本シナリオとしていないのは、ほとんどの先進国の潜在成長率が下方屈折し、自然利子率が低下しているためである。最も堅調な米国ですら、政策金利や市場金利が大きく上昇することは想定されない。不幸中の幸いだが、先進各国とも低金利が継続するため、日本の預金者がマイナスの実質金利に直面しても、海外に資金の逃げ場はなく、当面は劇的な円安が避けられる。